契約書に記載されたキャンセル料について
- 執筆者 モータージャーナリスト 金子
- (@car_kaneko)
車を買取業者に売却した後に、キャンセルをしたい場合は、キャンセル料が発生する可能性があります。トラブルを防ぐためにもJADRI加盟の業者を選びましょう。
かつては契約直後でもキャンセル料が発生
所有していた車を車買取業者に売却した後、なんらかの理由でキャンセルしたい場合、状況によってはキャンセル料が発生します。
キャンセル料とは解約に伴う事務手数料としての意味と解約に生じる逸失利益に対する損害賠償金という意味があり、車買取業務におけるキャンセル料は前者的扱いのため、キャンセル料の請求はけっして不当なものではありません。
ただし、以前はそのキャンセルに対する請求内容には大きな問題がありました。
車買取業者が乱立気味だった以前、売買契約書にはキャンセル料が明記されていましたが、その内容は「契約後にキャンセルを申し込むと一律◯万円を損害賠償として請求する」というもので、業者による差はありましたが5~10万円の範囲内で記載されていました。
これは売買契約直後でも適用されることから車を売却したユーザーと車買取業者の間でトラブルとなり、多く発生したことから国民生活センター(消費者センター)に苦情が殺到しました。
JADRIに加盟している車買取業者なら安心
現在は国民生活センターから業者に指導が入り、以下のようにキャンセル料発生のガイドラインを段階で分けて明確にしています。
- 車買取業者が単に売買契約の書面を交わした段階で起きるキャンセルは車買取業者における平均的損害は発生していないものと考えられる(つまりキャンセル料は請求できないという解釈です)。
- オークションに出品予約をした段階、オークション会場に車両の陸送が済んだ段階、落札者が現れた段階に分け、各段階の当該事業者としての平均的な損害を立証した場合に限り、倍賞を受け取りことができるとする。
- 平均的損害を超える賠償金はキャンセル料といった名目でも消費者からは受け取ることができないと考えられる(つまり平均的損害以上は支払う必要がないという解釈です)。
車買取査定業者の大手は一般財団日本自動車流通研究会JADRIを設立、この団体に加盟した車買取業者は契約締結後、すぐのキャンセルにおけるキャンセル料を撤廃しました。
ガリバーやアップルネットワーク、オートスピリットなど大手が加盟しているのでキャンセル料に不安がある場合はJADRI加盟の業者を選択する方が賢明です。
またJADRIに加盟していない業者に売却する際、契約書のキャンセル料に「一律◯万円」と記載されれていたら、キャンセル料の明確な条件を契約書の備考欄に記載するなど、一方的なキャンセル料の請求に対処できるような契約書の作成をお勧めします。
買取契約後のキャンセル料は、法律的に支払い義務はある?
車の買取契約後のキャンセル料に関する実際に起きたトラブルとして、国民生活センターでは以下のようなケースを紹介しています。
中古車を買取業者に25万円で売却する契約を交わしたが、その後家族で話し合い、やっぱりキャンセルすることにした。そして契約から3日後にキャンセルを申し出たところ、10万円のキャンセル料を請求された。確かに約款を見ると、「売買代金が100万円以下の場合は一律10万円のキャンセル料がかかる」旨が記載されていたが、契約時にそのような説明はなかった。
これは、実際に国民生活センターに寄せられた相談です。ほかにも、同じようなトラブルが多数起きたものと思われます。
契約約款にキャンセル料に関する項目があったのなら、従わなければいけないと思う人も多いのですが、ここで大切なのは「法的に問題はないかどうか?」ということです。
車の買取契約後のキャンセル料の場合、「消費者契約法第9条1号」という法律が関係してきます。
消費者契約法第9条1号
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分※e-Gov.「消費者契約法」より抜粋
一見するとわかりにくいのですが、ごく簡潔に説明しますと、「キャンセル料や違約金について定めた契約事項があっても、平均的な損害を超える分の請求については無効としますよ」という内容です。
この場合の平均的な損害とは、同じ事業者で同じ契約がキャンセルされた場合に生じる、損害額の相場という意味合いになります。
つまり、約款でキャンセル料が定められていたとしても、その額が実損の相場を上回る場合、消費者は支払う義務はないということです。
この消費者契約法第9条1号に関する裁判は、さまざまなジャンルでいくつも起きており、契約内容を無効とする判決が多数出ています。
そこで、車の買取契約後のキャンセル料についてはどうなるのかという問題ですが、国民生活センターの消費者苦情処理専門委員会では、以下のような見解を示しています。
- 平均的な損害は、キャンセルした時期によって異なるとはいえ、契約を交わしただけの段階ではまだ発生していないものと考えられる。
- キャンセルがあった場合は、その段階での平均的な損害について立証できた場合は賠償を請求できるが、それを超える分については消費者に支払いを求めることはできない。
- つまり、「100万円以下の場合は一律10万円」のように、平均的な損害を考慮しない契約約款の条項は不当条項にあたり、無効となる。
車の買取契約の場合、キャンセルした時期によってはすでに車の整備や清掃が終わっていたり、買い手が見つかったりしているケースもあります。
その場合は、それぞれの状況に応じて買取業者がこうむった損害を賠償する必要が出てきますが、それ以上の額をキャンセル料として支払う必要はない、ということです。
上述したように、「JADRI」に加盟する買取業者は、契約後すぐのキャンセルにおけるキャンセル料を請求しないという取り決めをしています。
もしキャンセルの可能性がある場合は、トラブルを避けるためにもJADRI加盟の業者を選んだほうが安心です。
またJADRI加盟業者ではなくても、実際の損害を上回るキャンセル料については、国民生活センターの見解どおり支払い義務がないと考えられます。
もし高額なキャンセル料を請求された場合は、国民生活センターに相談してみてください。
あなたに合った売却方法は?
現在、車の売却方法は買取業者や下取りだけではなく、オークション形式や特定車種に強い買取店などさまざまな方法があります。自分に最も合った売却方法を選んで最も高く売れるようにがんばりましょう!
※人気車から不動車まですべての車に価値がありますので、どちらか一方又は両方に一度買取査定をとってみましょう!